アジアの歌姫「テレサ・テン」その2

今日は5月8日です。1995年の5月8日にテレサ・テンは42歳の若さで亡くなりました。

日本では皆さんご存知のように「時の流れのままに」「つぐない」「愛人」などの歌謡曲で有名ですが、故郷台湾や香港、シンガポールなどでは日本に来る前からもう既に、最高の人気歌手だったのです。


時の流れに身をまかせ 1986-12-11 第19回全日本有線放送大賞

来日当時有名ではなかったので、後の日本での活躍の陰には、バラエティショーの出演や、意にそぐわない歌謡曲の吹込みなど彼女の実力からして不本意な事も多かった事でしょう。

でもそういう事にもめげずに彼女の吹き込んでくれた歌謡曲は全て、我々日本人の予想以上に立派なものでした。


日本のバラエティ番組に出演 1977年

テレサ・テンは日本語のもっている、ニュアンスを見事に表現して、これを日本の聴衆に一つも違和感なしに感動させてくれる語学と歌の才能は目を見張らせるものがありました。

そして我々日本人が知らないテレサ・テンの一面として、忘れてはならないのは、東南アジアの中国人ネットワークが彼女を支えたという事です。華僑としてアジア中に散らばった中国系移民たちが第2次大戦後の落ち着きつつあるアジアの中国系社会の共通の最初のスターとしてテレサを歓迎したのでしょう。

それが証拠にテレサは香港、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどを度々訪問しています。


鄧麗君 漫步人生路(香港語・粤語)原曲:中島みゆき・ひとり上手

こうして、アジア全体を行き来していたテレサにとって1989年に起こった、中国の天安門事件は最も心を痛めた出来事でしょう。あの事件のあと、自分の歌手生命をかけて香港での抗議の集会に出席した事でその事が理解できます。中国人社会の要の中国本国が民主化するかどうかの瀬戸際で起こった、あの悲惨な事件は彼女を失意のどん底に落とした事は想像に難くありません。

《 君在前哨 》鄧麗君 1988年 「あなたは前線に」(映像は途中からです)

軍隊への慰問活動をするテレサ・テン 

天安門事件が起こる以前から、中国大陸ではテレサ・テンの歌がブルジュアかぶれした共産主義には敵対する歌として禁止されたにもかかわらず、民衆は隠れて聴いたそうです。当時、「昼間は鄧(小平)の演説を聞き、夜は隠れて鄧(麗君)を聴く」と民衆の間で比喩された話は有名でした。

日本では一歌謡曲歌手としてだけの彼女ですが、国外(特にアジア)では中国系の人々のアイデンティティのきずなであったのでしょう。死亡してからもいまだにその人気は衰えずCDショップの店先ではどこでも彼女のあの笑顔を見る事が出来ます。

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最後に彼女の代表曲「甜蜜蜜(ティエン・ミー・ミー)」を紹介します。それこそ甘い歌声にまるで夢の中をただようような美しい曲です。


【 甜蜜蜜(蜜のように甘く)】
  とても甘い あなたの笑顔はとても甘い
  まるで春風の中で咲く花のように
  どこで どこで会ったのかしら
  あなたの笑顔はこんなに知っているのに
  ちょっと思い出せないわ
   ああ 夢の中かしら・・・

  夢の中であなたに会って
  甘い笑顔を見せてくれたのね

  あなたよ あなたよ
  夢の中であったのはあなただわ
  どこで どこで会ったのかしら
  あなたの笑顔はこんなに知っているのに
  ちょっと思い出せないわ
   ああ 夢の中かしら・・・

関連する過去記事:「アジアの歌姫「鄧麗君」(テレサ・テン)」もご覧ください
過去記事:「鄧麗君(テレサ・テン)紀念公園 に行ってきました!」もご覧ください

追記:5月8日はもう一人、台湾で最も有名で敬愛されている日本人「八田與一」の命日でもあります。
詳しく書いていますので「八田與一~台湾で最も有名で敬愛されている日本人」もご覧ください。

アジアの歌姫「鄧麗君」(テレサ・テン)

もうすぐ5月8日になります。25年前のこの日、私の敬愛する歌姫「鄧麗君(テレサ・テン)が亡くなった日です。

「空港」という歌で一躍有名になり、私もいい曲だなあと思うだけで、彼女が台湾人で既にアジアでは有名な歌手だったという事は、当時は全く知りませんでした。


鄧麗君:情人的關懷 (原曲:空港 )

ではなぜテレサの歌声に惚れ込んでしまってファンになってしまったのかと言うと、20代の終わり頃にある事情で台湾で働くという事になってからなのです。

当時、昼間はデザイン会社で働き夜は言語学校で中国語を勉強するという生活が始まりましたが、初めての外国で一人生活すると、ご多分に漏れず私も「ホームシック」に罹ってしまったのです。

最初は外国生活が珍しく楽しい日々が続いていたのですが、1年を過ぎるころ、寝ても起きても日本のことが思われ、和食が恋しくなり、しまいには日本の冬のあの冷たい風までが恋しくなる始末でした。何しろ台湾は亜熱帯で真冬でも20度を下回る事が無いくらいですから・・・。
安月給ではクーラー付きの家など借りれるはずもなく、全く暑さとの戦いの毎日でした。


雪化粧 / テレサテン / 当時テレサ・テンは北国出身の人と思っていました

ブラジル移民の日本人が日本のことが恋しくて、日本人以上に日本的になるという事を聞いたことがありますが、短い滞在期間でしたが私の場合も全く同じ状態でした。

とにかく日本の文字が恋しくなり日本の本を読みたさのために、台北にある古本屋を巡りついに、真っ黒に手垢で汚れた「文芸春秋」を探し出した時などは、宝物を探し出したような気がしたものです。今では台北のどこにでも日本の本を売っていますが、その頃は殆んど無かったのです。 

こんなある日、テレサ・テンの歌う日本の演歌のCDを見つけました。星影のワルツ、北国の春などの歌をきれいな日本語で歌っているのです。これを聴いた途端私の枯れ切っていた心に一滴の水が沁みわたったような気がしたものです。日本人以上に情感のこもった美しい日本語とあの優しい歌声が、疲れていた私を頭から足の先まで癒してくれました。


港町絕唱 テレサ・テン(原曲歌:八代亜紀) あまりにも日本語が美しいのでてっきり日本人が歌っているのだと思いました

それ以来今に至るまでずっとテレサ・テンのファンです。あの愁いを含んだ優しい歌声は日本語であれ中国語であれ、英語、台湾語、広東語(香港語)、どんな国の言葉でも素晴らしい表現力です。

特に中国語の歌唱は他の語の言語よりも気持ちがこもっていて、素直な感動を与えてくれます。私も勉強の甲斐があって少しは中国語が分かるようになったので、それ以後はテレサの中国語の歌も聴く様になりました。


鄧麗君:小城故事~小さな町の物語(映画挿入歌)

台湾オリジナルの「小城故事(小さな町の物語)」(聴覚障害者の恋愛を描いた心温まる映画の主題歌で有名になりました)などは中国情緒たっぷりの美しい曲です。

そして私が最も好きな曲は「君在前哨(あなたは前線に)」という歌です。軍隊を慰問した時に歌って、大きな話題になり台湾人の誰でも親しんでいるのがこの曲です。

この曲の歌詞を聴いていると若い人の純真がこれほどまで切々と語られている簡潔な詩は無く、またテレサ・テンの美しい透き通るような歌唱で、感動がこみ上げてきます。

私はこの曲を聴くとつい目頭が熱くなるほどです。テレサ・テンを代表する名曲だと思います。
(誰の思いも同じらしく、台北郊外にあるお墓に代表曲10曲がセットされていて、ボタンを押すと好きな曲が流れるようになっています。この曲もその中の1曲なのです。)
今でもテレサ・テンの代表曲として親しまれています。

最後にこの歌の訳詩を紹介しましょう

鄧麗君 - 君在前哨 1977

 【君在前哨~あなたは前線に】
 今日  私の思いをあなたに送る
     あなたの暖かい思いやり  ありがとう
 前線にあなたがいて  私を守ってくれる
  あなたのために  私は自分を大切にする

 時々私は  白い雲に聞いてみる
 青い空にも  頼んでみる
 あなたに  よろしくと

今日  私の思いをあなたに送る
    あなたの暖かい思いやり  ありがとう
 前線にあなたがいて  私を守ってくれる
  あなたのために  私は自分を大切にする

今お元気だったら何歳でしょうか。今までの可愛い雰囲気の曲からはまた違った、新しい展開が有っただろうに、本当に残念でなりません。

関連する過去記事:「ホームシックとテレサ・テンの歌」もご覧ください

”台湾”そのものの女性が主人公の映画~ステキな彼女

台湾は目下、新型コロナウィルスの感染者ゼロが続いていますね。日本は?というと連休に入ったというのに自粛勧告が続いていてどこにも行けません。普段の生活が戻っている台湾がうらやましくてなりません。

大好きな台湾には行けないので、せめて台湾の映画を見たり歌を聴いたりして、行った気分に浸っています。

ところでどんな映画か?と申しますと・・・。侯孝賢監督の初期の作品「ステキな彼女」と「風が踊る」という青春映画です。1980年の相当古い映画です。そのどちらにも当時台湾では最も人気のあった二人の歌手「鳳飛飛」と「鐘鎮濤」が共演していました。

「ステキな彼女」は公開するや大ヒットになったそうです。それに次いで作られた「風が踊る」は恋愛映画の傑作との評価が高い作品です。(どちらもDVDでしか見てません)


電影"就是溜溜的她"主題曲 鳳飛飛:主唱 1980年

私は何度見たか分からないほどですが、またこの休みに見たくなりました。


電影"風兒踢踏踩"主題曲 寶玲:主唱 1981年

特に主演の「鳳飛飛」がまさしく台湾女性そのものの性格を表しているようで見る者の気持ちを温かくしてくれます。ちょっと気が強いけど明朗快活で人情に厚く、生活力にあふれている・・・そんな台湾女性の気質を一編の映画にしたかような作品にいつも元気をもらっています。

何度見ても飽きることがありません。80年代の台北の街並みや田舎の風景も懐かしく、郷愁をそそります。


【就是溜溜的她】電影 (ステキな彼女の一場面)

歌手としての「鳳飛飛」も台湾滞在中はいつもテレビで見ていました。好きな歌がたくさんありCDも買いました。でも残念なことに2012年の1月に病気のため亡くなってしまったのです。(享年60歳)。台湾の人の悲しみはどれほど大きかったことでしょうか、彼女は台湾の国民的歌手でしたから・・・。

この歌を聴いてものすごく感動しました。最初は日本の「千曲川」の台湾版とは知らずに聴いたのですが日本のよりは気に入りました。


鳳飛飛《 心影》セリフ付き(原曲:千曲川)歌詞は全く違います

この歌もヒットしました。感情がこもっていて感動させられました。


鳳飛飛 好歌MV 《另一種鄉愁》(原曲:昴~すばる~)

テレビ番組でしょうか、二大歌手が映画「ステキな彼女」の挿入歌を歌っている貴重な映像がありました。初めて見たのでとても感動しています。


鳳飛飛、鍾鎮濤 又見溜溜的她 (映像が古く音量も小さいことをご了承ください)

張菲と費玉清の兄弟の司会による肩肘の張らない楽しい番組が評判でした。(費玉清は昨年11月7日に惜しまれて引退しました)


龍兄虎弟 張菲+費玉清+鳳飛飛

■映画全編は:「素敵な彼女」はここから(注意:1時間29分以降は重複しています) 「風は踊る」はここから(どちらも日本語訳はありませんが、少し中国語が分かる方でも理解できる内容なので、台湾映画に興味のある方どうぞご覧ください。)

関連する過去記事:「侯孝賢監督のデビュー作は心温まるラブ・コメディ!」もご覧ください


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